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紙芝居「いなむらの火」            2011年2月20日

難波の紙芝居教室を控えて、教室に通ってくださっているMさんが、「いなむらの火」の紙芝居の実演で、悩んでいるので、よろしくお願いします。」という、相談を持ち込まれた。

「いなむらの火か・・・」、私は、心の中で、つぶやいた。「いなむらの火」というお話は、御存知の方もおられると思うが、江戸時代の終わりごろ、和歌山県で、本当にあった出来事を、小泉八雲が、再話して作られた物語である。以前、小学校の国語の教科書に載っていたのだが、来年度の5年生の教科書に、再び登場することになったそうだ。

話の内容は、荘屋で、つくり醤油屋をしていた、浜口五兵衛が、高台の上から、海を眺めていた時に、地震が起こり、海の水が、一機にひいていくのを目撃する。五兵衛は、すぐに、津波がやって来ることを悟った。浜辺では、村人達が、稲の豊年を祝う祭りの支度をしていた。五兵衛は、津波が来ることを、村人達に知らせる為に、刈り上げばかりの、たわわに実ったいなむらに、火をつけて村人達に知らせて、4百人の人々の命を救ったというお話だ。

Mさんは、この紙芝居を実演するにあたり、和歌山県の湯浅の現場まで、見にいかれたそうだ。そして、大型紙芝居で、実演の本番を控えて、実演の壁にぶち当たっておられるようだった。

「いなむらの火」の紙芝居は、偶然にも、並版であるが、私も、今、練習をしている作品であった。正直、最初は、とてもやり易い紙芝居だなと、この作品をなめてかかっていた。だが、何回も練習をすればするほど、わからなくなってくるのだ。

私は、本物の良い作品とは、こうして、何回も練習しても、奥が深くて、練習すればする程、とてつもなく未知の世界に入り込んでしまうような気持ちになる。

Mさんも、きっと、何回も何回も練習をされて、悩まれていたのであろう。私も、正しく、同じ気持ちであった。それで、今日の朝から、時間ぎりぎりになるまで、何回も練習を重ねた。練習台の母の前で、何回も、駄目だしをされ、私は、悔しくて、何度も、「いなむらの火」に挑んだ。すると、不思議なことに、絵を見て、練習していると、裏の文の行間が垣間見えて来るような気持ちになった。「ああ、こういうことが、言いたかったのか。」とか、「ここは、こういうこと風にも捉えることができるなあ」と、だんだんと、五兵衛さんが、いなむらに火を点けた時の心の変化や、津波が押し寄せて来た後の、村人達の絵の表情を見た時に、津波の大水で埋もれてしまった村の姿と、明々と燃えるいなむらの火の明かりとの対比など、この作品の奥底に秘められているメッセージが、私の脳みそに、むくむくと湧きあがって来たように思えた。

母が、「まあ、完璧やないけど、だいぶ出来てきたんとちがう?」と言ってくれた。私自身も、これでいいとは思われなかったが、もう、時間がない。教室が始まるぎりぎりの時間に、部屋に飛び込んだ。(みなさん、ほんまに遅れて、ごめんなさい。)

最後の実演で、「いなむらの火」を演じさせて戴いた。じしんの紙芝居で、じしんはなかったが、迷いのない演じ方をしないと、Mさんに申し訳ない。私は、自分が実演した後に、演じる時の留意点を、ありったけの想いを込めて、Mさんや、出席してくださった皆さんに説明させて戴いた。すると、Mさんの隣に座っておられた方が、「紙芝居って、ほんまに難しいですね」と、ぽつりと、おっしゃった。

そうなんです。紙芝居て、奥が深くて、やればやる程、難しいんです。だからこそやり甲斐が、あるんですね。どんな芸術でもそうやけど、紙芝居は、日本で生まれて、まだ、80年ほどしか経っていないし、文献も少なく、研究もこれから為されていくものだから、出来るだけ多くの紙芝居を、出来るだけ多くの方々に観て戴くことで、これからも皆さんと共に、紙芝居の学びを深めていきましょう。紙芝居は、演じられて、初めて完結するものなのですから・・・

                     byみかん

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コメント

 私も「いなむらの火」の大型紙芝居を中学のお話会と図書ボランティアの集まりで演じたことがあります。
 実際の話はどうなのかと図書館にある本を色々読むと、村人が助かり「よかった、よかった…」だけではなく、実はその後が大切で、私財を投じて堤防建設や治水工事を行ない、そのおかげで後世の人々も助けられたという歴史も知ることができ、生徒たちにも紹介しました。 
「歴史マンガ 浜口梧陵伝」 クニトシロウ絵・文 (文渓堂) が子どもにもよくわかりそうでよかったです。
 ただ演じるだけではなく、もとになった話やその背景を知った上で演じることって大切ですね。 

投稿: いそちゃん | 2011年2月24日 (木) 23時50分

いそちゃんさん、こんばんは!書き込みをして戴き、ありがとうございます。まさしく、いそちゃんさんの言う通りですね。
紙芝居を演じきろうと思ったら、その作品の出来た経緯を詳しく調べると、演じ方も、もっと深めることができますね。
いそちゃんさんが、教えてくださったマンガの本を、読んでみて、子供達にも、紹介したいと想います。教えてくださって、ありがとうございます。
                      みかん

投稿: | 2011年2月26日 (土) 01時34分

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