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びっクリしたなあ~もう・・・          2010年5月11日

あれは、忘れもしない、昨日の午後のことやった。母と一緒に出かけるべく、家を出ようとしたら、母ちゃんが、韓流ドラマにはまってしもてて、これを見てから出かけるとのたまう。

うちは、その時、難波に用事が在るので、それから、母と一緒に電車に乗ったらええか、その方が段取り良く事が運ぶと、判断した。

「ほんなら、駅のエレベーターを2つ上がったとこの切符の券売機の前で、2時に待ち合わせしょうか?」と提案したが、母は、ちょっと不安そうな顔をしたので、以前待ち合わせをしたことのある場所が、とっさに頭に浮かび、「じゃああ、クリ売ってるとこの前で、この前とおんなじ場所で、2時ね。」

母もそれで、得心したようやし、うちも、その方が安心やと納得した。それが、大きな間違いの始まりであった。

地下鉄で難波駅に着いて、用事を済ませたうちは、すわ、クリ売り場へ駆けて行った。時刻は、ちょうど2時少し前。ばっちりや!だが、私は、その場所へ着くと、目が点になった。「ない。あの、いつものクリ売り場が、どこにもない・・・なんで?何処いったん?」私は、慌てて、デパートの中に入って、店員さんにクリ売り場はどこかと尋ねた。

店員さんは、正確に、方向おんちの私に解る様に教えてくださった。私は、目を血走らせて、クリ売り場へ急いだ。ああ、やっぱり、こんな解りにくい所に変わっている。これでは、私に、輪をかけた、方向おんちの母では、到底、此処まで来れないであろう。

全てがうまくいくと思ったうちが、おばかさんだった。まさか、クリ売り場が、デパートの新装改築工事のおかげで、宿替えされていたなんて、そこまで考えが及ばなかった。

私は、案内係の男性に、恥も外聞もなく、「すんません。母とクリ売り場で待ち合わせしてるんです。アナウンスで、クリ売り場で待っているて、呼び出してもらえませんか?」

「えっ?クリ売り場でですか?もっと他の解り易い場所にされたらどうですか?」と、おっしゃってくださったが、うちは、「いいえ、母とクリ売り場で待ち合わせするて約束したんです。前もクリ売り場やったから、其処にしたのに、場所が変わってしまったから、会えないでこまってるんです!」と、うちは必死で頼み込んだ。

男性は、納得されたようで、内線電話で、母の名前とクリ売り場で家族が待っているとアナウンスして欲しい旨を伝えてくださった。だが、やっぱり、アナウンス担当の方も、待ち合わせの場所が、クリ売り場だということが、不思議で仕方なかったようだ。二言三言、やり取りされて、男性は電話を切った。

うちは、クリ売り場の横の椅子に座って、母を待つことにした。クリ売り場の店員さんも、うちのことを気の毒がってくださって、お声を掛けてくださった。うちが、「場所を移動するんやったらあ、張り紙一枚でええから、一言書いて、貼ってくれたらええのになあ」とぼやいていた。

クリ売り場の横で座っていると、一人の高齢の男性が寄ってこられて、「いつも、入り口で売ってるクリはここでっか?」と尋ねて、クリを買っていかれた。

うちは、その時思った。「クリを売ってた場所には、綺麗なエレベーターが設置されてて、見る人によったら、クリ売り場が無くなってしまったと考える人もいたはるやろうなあ。一時的な売り場とちごうて、常設の売り場やったから、いつも楽しみにして、買いに来るお客さんもいたはったやろうに・・・たかが、クリ。されどクリやなあ。」

そんなことを考えながら椅子に座って、母を待っていると、さっきの案内係の男性が、走り寄って来て、「来られましたか?」と尋ねてくださった。うちが、まだ来ないというと、もう一度、アナウンスをするように手配してくださった。

結局、母はクリ売り場に来そうにもなかったので、うちは、最初に言った駅の改札の前で、待つことにした。そこで、3時間待った。自分の今まで生きてきた人生の中で、こんなに長い時間、人を待ったのは、初めてだ。もう、足がガクガクで、精神的にもまいってしまう。何時の間にか、おんなじように、ずっと駅で高齢の男性を待っていると云う年配の女性と、最後には、二人で、地べたにハンカチを敷いて、待つことにした。

やがて、その女性も、待ってた人が自宅に帰っていることが解り、うちに、丁寧に挨拶をされて、帰って行かれた。取り残されたうちは、帰宅のラッシュ時間になり、めまぐるしく行き来する人々の雑踏の中で、なんだか凄く、孤立感を抱き、不安な気持ちなってきた。母は、今頃、何処で、どうしているのだろう?ひょっとして、うちを探して、うろうろしている間に、具合が悪くなって、病院にかつぎこまれたのでは?だんだんと、不安の塊が雪だるまみたいに、膨れ上がっていく。

その時、先ほどから、何度も問い合わせている目的の宿泊地の方から、連絡があり、なんと、母は、到着しているとの連絡を戴いた。「ああ、良かった!無事やった。」

私は、4時間近く待ち続けて、もう、精も根もつきはてそうになっていたが、最後の力を振り絞って、電車に乗り、宿に着いた。時間はもう、7時半を回っていたが、宿の方が駅までえに来てくださっていた。宿に着くと、母が、部屋から出て、廊下で不安そうな顔で、うちを出迎えた。

やっぱり、クリ売り場がなくなっていたので、うろうろと探して、思い切って、電車に乗って、目的地に先に行っていたのだと言う。さもありなん。誰が悪いのでもない。ちゃんと、しっかりと一緒に引き連れて行けば良かったものを、年老いた母と、そんな駅の雑踏で待ち会わせしようとしたうちが、おばかだったのだ。

そういうたら、クリて栄養があって、美味しいけど、イガイガのトゲや堅い渋皮に包まれて、ガードのしっかりした食べもんやから、あもうみたら、あきまへんなあ。

全てのお世話になった方々に、厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございます。

せやけど、人生て、先に何が有るかわからんから、おもしろいでんな!

                   byみかん

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